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イギリスの作家ティム・セヴェリン(AD1940年生まれ)は、神話や伝説などの架空の冒険を始めとして、実在の有名な冒険者たちの足跡をなぞり、小説の主人公のモデルを探索する、冒険の再発見を続ける冒険家です。

BC6~1世紀の間に起きたことでしょうか、ギリシア神話の中に英雄イアソンが黄金の羊の毛皮を求めて、古代グルジアの王国コルキスへ航海する冒険物語があります。映画「アルゴ探検隊の大冒険」にもなった、ヘラクレス、オルフェウス、カストルとポルックスの双子などの英雄たちも参加する冒険です。

セヴェリンは、AD1980年代にこの伝説の検証を行いました。古代ギリシアのガレー船を駆って、ギリシアを出発し、コルキスがあった場所へ向けて黒海を航海したのです。

アルゴ探検隊の冒険は、ギリシア神話の中で語られる「トロイア戦争」の前に起きた出来事ですが、この戦争後にも英雄オデュッセウスによる10年に及ぶ漂泊の大冒険が行われたとされ、叙事詩「オデュッセイア」にまとめられています。

セヴェリンはオデュッセウスの冒険についても検証を行っています。その実験航海は、トロイアがあったとされるトルコ北西部から、オデュッセウスの故郷イタケー島とされるギリシャ西方のイオニア海に浮かぶイタキ島まで行われました。

AD6世紀、聖ブレンダン(クロンフォートのブレンダン)は、ティル・ナ・ノーグ(祝福された土地)への航海を行い、その成果はAD9世紀に「航海者聖ブレンダンの旅行」にまとめられました。その航海では世界の不思議と恐ろしさに遭ったと言い、シーモンスター(海の怪物)なども出てきます。

セヴェリンは、AD1976~1977年、聖ブレンダンの航海を検証する冒険に出ました。在住地アイルランドの西海岸地域に伝わる伝統船「カラハ」を駆って、聖ブレンダンが発見したとされるカナダ東岸のニューファンドランド島まで航海したのです。

この冒険の発端は、中世文学研究者の妻ドロシーが、ラテン語版「聖ブレンダンの航海」があまりにも具体的すぎると指摘したことにあります。この時の様子は彼の著書「ブレンダン航海記」で追体験することができます。

AD1096年、ゴドフロワ・ブイヨンは指導者として第1回十字軍に参加し、エルサレムの初代聖墓守護者となりました。彼の行軍した道を辿って、セヴェリンはフランスからエルサレムへと馬を走らせたのです。

AD1206~1634年に存在したモンゴル帝国では、騎兵たちが西への勢力拡大に明け暮れていました。彼らが駆け抜けた道を、セヴェリンは馬でゴビ砂漠を超えカザフスタンまで踏破し、モンゴルの騎馬文化のことを「チンギス・ハーンの軌跡」に描きました。

AD1271~1295年、ヴェネツィアの商人マルコ・ポーロは15,000キロに及ぶアジア旅行を行い、その成果を「東方見聞録」としてまとめました。実際には行かなかったものの、日本を「黄金の国ジパング」として紹介したりしています。

セヴェリンはオックスフォード大学で地理学を学ぶ学生でしたが、マルコ・ポーロの旅した行程をバイクで走破するという冒険に出ます。この時の様子は「バイクでシルクロード」としてまとめられ、シルクロードの山や砂漠をバイクで越えて行く若者たちの冒険を見ることができます。

この他にもセヴェリンは、AD1993年に「徐福伝説」に関する香港・北米間航海、AD1990年代中盤に博物学者ウォレスの足跡を辿る航海を行っています。そしてAD1990年代後半になると、小説「白鯨」のモビー・ディックのモデルの探索航海、冒険小説のロビンソン・クルーソーが漂着した島の探索航海を行いました。